矯正中の食事で注意すべきポイントとおすすめの食べ物

「矯正を始めてから食事がしにくい」「食べてはいけないものがあるの?」といったご相談を、患者さまからよくいただきます。
矯正治療中は、歯並びを整える大切な時期である一方、食事の仕方や食べられるものに注意が必要です。
特にマウスピース矯正とワイヤー矯正では、それぞれ注意すべきポイントが異なります。
マウスピース矯正では食事のたびに装置の取り外しが必要ですが、ワイヤー矯正では装置が壊れやすい食べ物や歯に詰まりやすい食材があるなど、気をつけたい点が変わってきます。
この記事では、矯正中でも安心して食事を楽しむために知っておきたい「避けたほうがよい食べ物」「おすすめの食事」「食後のケアの工夫」についてわかりやすく解説します。
ぜひ参考になさってください。

矯正中の食事でなぜ注意が必要なのか?

矯正治療は歯並びを整えるための大切な期間ですが、食事の仕方や食べ物の選び方を誤ると、装置のトラブルやお口の健康リスクにつながることがあります。
ここでは代表的な注意点を解説します。

・装置が壊れるリスク

ワイヤーやブラケットを使った矯正では、硬い食べ物や粘着性の強い食べ物によって装置が外れたり曲がったりすることがあります。
装置が壊れると治療期間が延びる原因になるため、食事には十分な配慮が必要です。

・食べかすが残りやすく、虫歯・歯周病リスクが高まる

矯正装置は凹凸が多く、食べかすが溜まりやすい構造になっています。
そのまま放置すると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
特に糖分の多い食べ物や飲み物は注意が必要です。

・着色や口臭の原因になることも

カレーやコーヒー、紅茶など色の濃い飲食物は、装置や歯に着色を残す可能性があります。また、食べかすが取り切れないと口臭の原因にもなります。
見た目や清潔感を保つためにも、食後のケアが欠かせません。

矯正装置別の食事の注意点

矯正中の食事の注意点は、装置の種類によって異なります。
ここでは、「マウスピース矯正」と「ワイヤー矯正」の場合について解説します。

1.マウスピース矯正の場合

マウスピース矯正は食事の際に装置を外せるため、基本的に食事制限は少ないのが特徴です。
ただし、次の点に気をつける必要があります。

・マウスピースをつけたまま飲食はNG
色の濃い飲み物(コーヒー・紅茶・ワインなど)は着色の原因に、熱い飲み物は変形のリスクに、糖分を含む飲み物は虫歯リスクにつながります。

・装着時間を守るため、だらだら食べは避ける
マウスピースは1日20時間以上の装着が理想です。
間食が多いとその分外している時間が増え、治療効果に影響する可能性があります。

2.ワイヤー矯正の場

ワイヤー矯正は歯にブラケットとワイヤーを固定するため、食べ物の種類によって装置に負担がかかることがあります。
以下の点に注意しましょう。

・固い食べ物は避ける
氷、せんべい、ナッツ類などの硬い食品は、ブラケットやワイヤーを壊す原因になります。

・ネバネバする食べ物は注意
キャラメル、ガム、もちなどは装置に絡まりやすく、外れたり掃除が大変になったりします。

・繊維質の強い食材が挟まりやすい
肉の筋や繊維質の多い野菜(セロリ、ごぼうなど)は装置に挟まりやすく、清掃が不十分だと虫歯や口臭のリスクにつながります。

矯正中におすすめの食べやすい食品

矯正治療中は「食べにくいもの」よりも、「工夫すれば食べやすいもの」に目を向けることが大切です。
食事の工夫次第で、矯正中でも快適に栄養をとることができます。

・やわらかい主食

おかゆややわらかいご飯、うどん、そうめんなどは歯への負担が少なく食べやすい食品です。
特に調整直後の痛みがあるときにおすすめです。

・煮物ややわらかいおかず

野菜は煮物やスープにすると柔らかくなり、噛みやすくなります。
肉や魚も小さく切ったり、ひき肉料理にすることで食べやすさがアップします。

・一口サイズにカットする工夫

果物やパン、肉などはあらかじめ一口サイズにカットすると、装置に負担をかけずに食べられます。

栄養バランスを意識する

柔らかい食べ物に偏ると栄養が不足しがちです。
タンパク質、野菜、乳製品をバランスよく取り入れ、健康的に矯正期間を過ごしましょう。

食事後のケアの大切さ

矯正中は食事そのものだけでなく、食後のケアもとても重要です。
適切なケアを怠ると、虫歯や歯周病、口臭の原因になることがあります。
装置の種類ごとに、特に気をつけたいポイントを確認しましょう。

・食後は必ず歯磨き、難しい場合はうがいを

食べかすが装置に残りやすいため、食後はできるだけ早く歯磨きをしましょう。
外出先などで歯磨きができない場合は、少なくとも水でしっかりうがいをして清潔を保ちます。

・ワイヤー矯正の場合は歯間ブラシやフロスを活用

ワイヤー矯正ではブラケットやワイヤーの隙間に食べ物が詰まりやすいため、通常の歯ブラシに加えて歯間ブラシやフロスを取り入れると効果的です。
細かい部分まで丁寧にケアすることが虫歯予防につながります。

・マウスピース矯正は装着前に必ず歯磨きを

マウスピースを装着する前に歯を磨かないと、食べかすや糖分がマウスピース内に閉じ込められてしまい、虫歯や口臭のリスクが高まります。
必ず歯磨きをしてから装着しましょう。

まとめ

矯正中の食事は、治療の進み方や口腔環境に大きく影響します。
食べにくさや制限があるからこそ、「食べやすい工夫」「装置に優しい食品選び」、そして「食後のケア」を意識することが大切です。

無理に我慢をする必要はありませんが、ちょっとした工夫を取り入れるだけで矯正治療をより快適に進めることができます。

「これって食べてもいいのかな?」と迷うときや、不安を感じたときは自己判断せず、必ず歯科医師に相談してください。
一人ひとりのお口の状態や装置に合わせて、より安心できるアドバイスを受けられます。

矯正治療は美しい歯並びと健康なお口を手に入れるための大切な時間です。
正しい知識と食事の工夫で、無理なく楽しく矯正生活を送りましょう。

江口矯正歯科クリニックの専門医より一言!

矯正治療中の食事に関しては、始める前は気になって良く聞かれる項目です。
しかし、いざ治療を開始すると、ほぼ聞かれなくなります。
人間の適応力のすばらしさと言えるのではないでしょうか。
自然と、避ける食物と食べやすい食物を感じ取っているようです。
最初は上記のような指導はおこないますが、開始すると患者様にお任せですので、色々と見つけていただければと思います。
例えばマウスピース矯正を開始した女性の方でも、1週間交換の半分を超えたら色のつくのは気にせずにアイスコーヒー等をの色のつく飲み物でも飲んでますと言われてました。
ただ、マウスピースの変形する熱いものは避けていただきたいですね。
ワイヤーではホウレンソウなどがワイヤーにまとわりついて取りにくいと言っている方が多いですね。

江口矯正歯科クリニック

【この記事の著者】

歯科医師 江口公人 - 江口矯正歯科クリニック

江口 公人 えぐち きみひと

[ 経歴・資格・所属学会等 ]

  • 1988年 徳島大学歯学部卒業
  • 歯学博士
  • 日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医
  • 日本口腔インプラント学会会員
  • インプラント認証医
  • 日本矯正歯科学会
  • KIRG準会員
  • 関西アライナースタディークラブ主宰

江口矯正歯科クリニックは、その前身の医院から数えると約25年間、新田辺駅前で矯正治療を行ってきました。その間、約3,000人の方々に矯正治療を行っていただきました。小さな医院だからこそ、患者様と話もしやすく、診療の風景も見てもらいやすいことはとても良かったと思っています。

子供の成長期の機能矯正治療から、成人矯正、マウスピース矯正まで行う事で、治療の選択肢を広げる事ができました。今後も患者様に合った治療を考えていきたいと思ってます。